ノルウェイの森
少し前からまたちょっと風邪をひいて、早く治したかったので直ぐ病院に行って薬をもらって飲んでいた。薬は三種類あって、そのひとつは副作用で手の震えが起こる。何かものを持ったりすると震えるし、字もちゃんと書けない。
それが薬のせいだとわかったのは五月にひいたひどい風邪のときで、なんとなく薬の説明書を読んでいたらきちんと書かれていてなんだ、そうだったのかと納得した。
それからはその手の震えを楽しむようにさえなった。わたしはちょっと変なのかもしれない。
これは薬のせいではない気がするけれど、土日のあいだ外に出るのがとても億劫で、シャワーを浴びたり着替えをしたり化粧をしたりするのが考えただけでもものすごくパワーを必要とするように思えた。
だから諦めてなんにもがんばらないことにした。
ただ、きょうは早く目が覚めて、7時ころになんとなく絵を描いてみようと思ったので、起き上がって筆洗に水を汲みスケッチブックから紙を一枚切り取った。
でもやっぱりいつものように、頭で考えているようにはうまくいかなくて、それでも長い時間がんばって紙に向き合ってとにかく手を動かしていた。
だんだん良くない方向に思いが向かっていった。
描いても描いてもなんにもいい絵が描けやしない、ごろごろ実家の部屋で引きこもってなにをやってるんだ。
お腹も空かないし何も作る気がしない。
とにかくひとりでいたくて結局今日食べたものといえば、バナナチップスと昨日作ってはみたものの苦くてたくさん余ってしまった苦瓜とひじきの梅オイル和えとアベックラーメンだけだ。
なんてヒドイ週末だろう。
わたしが今使っている部屋は元は妹の使っていた部屋で、いくつか妹のものがそのまま置かれている。
大きな本棚は横に倒されて、側面だった部分を上にしてレコードプレイヤーなどを置かせてもらっている。棚のなかには妹の蔵書が何冊も積み重なっている。
そのほとんどが村上春樹のものだといっても過言ではないほど彼女はきれいな状態の単行本でかなりの数、彼の書いた本を所有している。いつも妹は何か本を貸してくれと頼むと嫌な顔をせず快く本棚からそれを探しては手渡してくれた。だからわたしはきちんと頼んだわけではなかったけれど、いつでもこの部屋にある本は大切に扱えば読んでもいいものととらえていた。
だけどいつも少し読んではみるものの、なかなか彼のなかにまで入り込むことができないまま途中で閉じてしまった。
たぶんいろんな要素が重なって(全てのものがそうであるように)その赤と深緑の本を手に取ったのだろう。
わたしが初めてこの恋愛小説を読んだのは、少なくとも十年は前になる。
読み始めたらいくつかの場面がだんだん思い出されて気付いたらもう中へ中へ入り込んでいた。
一気に上巻を読み終えて、トイレに行きアベックラーメンを食べて歯を磨いたあと、枕元に電気スタンドをセットしてカーテンをしめその灯りのなか、今度は深緑の本の1ページ1ページを左から右へ移していった。
そして夜は来てくれた。
まずは妹にお礼を言おう。
ノルウェイの森、借りました。ありがとう。
いい文章を読むと、いい文章が書きたくなる。
それは意図してではなくて、自然にと言っていいくらいすらすらと浮かんでくる。だからこれも、本を読んでいた体勢のまま携帯でひたすらボタンを押しまくって書いている。
あきらかに影響を受けていて、こんなのを他人が読んでもおもしろくないかもしれないが、本人はとてもたのしくて夢中で遊んでいるようなものだ。
だからたぶん句読点なんかはめちゃくちゃで、読みにくいかもしれない。
いまはたのしいけれど、あとで読み返したら削除してしまいたくなるかもしれない。
でもこんなことは滅多にないものだから残しておくことにする。
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